(くらしの目)家を改修、人々つなぐ「シェア空間」 堀内正弘さん

2014年10月19日05時00分

写真・図版

 

堀内正弘さん

ほりうち・まさひろ 1954年生まれ。
多摩美術大学教授(都市プランニング)。
昨年7月にシェア奥沢をプレオープン、
今春に正式開設。

 堀内さんは東京都世田谷区にある自宅の別棟を改修して「シェア奥沢」というスペースを運営しています。どんな空間なのか、訪ねて話を聞きました。

 ――木の柱に土壁、ガラス戸。庭の緑も見えて、なんだかここにいると、ほっと落ち着きます。

 「築約80年、約90平方メートルの木造平屋です。住んでいた親戚が引っ越した後、20年ほど空き家のままでした。ある時、作品制作の場所を探していた教え子が使わせてほしいと申し出てきて。それを転機に、この場所を活用したいという多くの方たちの力で、散らかっていた室内を片付けて補修し、オープンできました」

 ――どんな場にしたいと?

 「都市計画やまちづくりを専門にしてきて、コミュニティースペースを作りたいと思っていました。人と人とが時間を共有して、知り合うきっかけになる場です。いま孤独の問題は深刻です。顔見知りでも話をせず、コミュニケーションが不足している。特に退職して地域に戻ってきた男性に目立つ。カフェもいいのですが、男性はお茶を飲むだけでは話が続かない。仕事でも趣味でも、何かそこでやることがあって、集まれる場所をと考えました」

 ――公民館や集会場などは?

 「公共施設は利用時間が限られたり予約が大変だったりして使い勝手が悪く、居心地もよくない。家でも職場や学校でもない場所で、アットホームに感じ、落ち着いて時間を楽しむことができる場にしたかったのです」

 ――どんな使われ方をしているのですか?

 「音楽会やトークイベント、ワークショップ、NPOの会合など色々です。2部屋の板の間に台所もあり料理もできます。イベントのない平日の昼間は、もの作りや調べ物などやりたいことを持ち込めるコワーキングスペースにしています。いずれも予約制で有料。子育て中のお母さんも90代の常連さんもいらっしゃいます。遠くから来る人もいます。地域の人と、何かに共通の関心を抱いて集まる人の双方がつながり、コミュニティーが作られると考えています」

 「色々な申し込みがありますが、単なるイベント会場の提供ではないので、場の趣旨に合う企画を選びます。これも公的施設ではなく私的に運営する場所だからできることです。情報発信は口コミやフェイスブックで。実は私の生活にとっても、ここはニーズに合うのです。私の母は介護が必要な状態で自宅におり、私も外へ出る機会が減っています。ここでイベントが開かれれば私も楽しめますし、音楽鑑賞の時には母もこちらへ来て聴いています」

 ――順調なスタートですね。

 「この1年でノウハウを積み重ね、コミュニティースペースのイメージも固まってきました。これを公開して共有し、広げたいと考えているところです」

 (聞き手 編集委員・大村美香)